【1)老化によるもの忘れと認知症の違い
齢をとると物忘れが多くなるのは自然の理です。でも忘れたことを知っていますよね。何かヒントを出せば、思い出したら「あ、わかった!」といって手を打って答えます。でも認知症の場合は、脳の記憶機能の部分そのものが損傷を受けるため、忘れたこと自体を覚えていないのです。朝食を食べたことそのものが記憶にない。家族の顔を覚えていない。思い出すためになにかヒントを出しても、記憶がよみがえりません。これが老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いです。
【2】赤ワインの効果
最近の研究で、赤ワインが、記憶をつかさどる脳の神経細胞の数を倍増させることがわかりました。その結果、認知能力のアップが期待できるようになったのです。これは名古屋市立大大学院展開医科学チームの動物実験によるものです。しかし白ワインでは効果がなかったそうです。
今までの研究では、フランス・ボルドー大などの疫学調査で、赤ワインを1日400ml飲む人は、飲まない人に比べて認知症になりにくいことが突き止められていました。400mlとはグラス3杯ちょっとの量です。これは赤ワインに含まれるポリフェノールの一種の「レスベラトロール」という成分が、脳にいい形で働くからです。脳の海馬という記憶をつかさどる部分が、マウスの実験では飲む前よりも2倍に増えていたそうです。この実験でも、白ワインを飲んだマウスに変化はなかったということ。というのもレスベラトロールはぶどうの皮に多く含まれていて、皮を使っていない白ワインにあまり効果がみられないのは当然なのでした。
・レスベラトロールはお酒がダメな人もとることが
レスベラトロールは加熱をしても失われない性質なので、お酒が飲めない人は、赤ワインを加熱してアルコール分を飛ばせばとれますよ。ちなみにレスベラトロールの成分濃度が高い赤ワインは、フルボディータイプの色の濃いものだといいます。ただ気をつけたいのは、飲みすぎの弊害。飲みすぎは逆に脳だけでなく体全体にも悪影響を及ぼします。くれぐれも気をつけましょう。
【3】脳内のゴミを溜めない食事
認知症が起こる原因の一つに、アミロイドβがあります。アミロイドβはタンパク質ですが、いわば脳内のゴミのようなもので、誰の脳の中にもある物質です。通常はすぐに分解無化されて外に排出されてしまいます。しかし異常に大きなアミロイドβが生じると、脳が分解・排出をおこなうことができないため、脳内にだんだん溜まっていきます。これが溜まりすぎて脳細胞にダメージを与えてしまい、ついにアルツハイマー型認知症を起こす原因となってしまうのです。認知症全体の中でアルツハイマー型認知症が占める割合はなんと約6割。アミロイドβが脳内で溜まることそのものを防ぐことが、認知症予防では重要課題だといわれています。
・アミロイドβの蓄積を防ぐ成分
アミロイドβが脳内で溜まるのを防ぐことがわかっている成分に、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの多価不飽和脂肪酸があります。そのほかポリフェノールやカテキンといった抗酸化物質も効果が認められています。
・アミロイドβの蓄積を防ぐ食べもの
1青魚
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった多価不飽和脂肪酸は、主にサバやイワシなどの青魚に多く含まれていることはよく知られていますね。特にDHAは脳を構成する物質ですから、記憶力などの脳力改善に大きな力を持ちます。
2緑茶
緑茶にはカテキンを含み、また体の抗酸化作用も。成分のカフェインは利尿を促すことで、血液中の不要なたんぱく質を排出します。
3赤ワイン
すでに述べたように、赤ワインのポリフェノール「レスベラトロール」の働きで、認知症を予防します。
このほか緑黄色野菜や果物などは血中コレステロール値を下げ、血管を若く保つ働きがあり、結果的にアミロイドβが脳内で溜まるのを防ぐ働きがあります。