【1】「吐き気」にはショウガのしぼり汁
ショウガには、吐き気など、胃腸の不快感を緩和する働きがあります。腸の働きに大きくかかわっている神経物質に、セロトニンという神経物質があります。私たちが食べた食物が、小腸に届くとき、胃の壁にこのセロトニンが分泌されて、腸が消化活動を始めますが、このセロトニンが過剰な働きを行うと、吐き気や下痢という症状を起こしてしまいます。ショウガの辛み成分のジンゲロールには、このセロトニンの過剰な働きを抑える作用があるのです。また胃潰瘍の発症を抑えたり、強い殺菌力があるため、昔から胃腸の健康にはショウガ汁がよいとされてきたのでした。
●「ショウガのしぼり汁」の作り方
1ショウガの皮をむきますが、包丁でできるだけ薄くむくようにすると効果的です。
2ショウガをおろし金ですりおろします。
3キッチンペーパー、またはガーゼの上におろしたショウガをのせます。ショウガを包んで絞ります。キッチンペーパーを使う場合は二重にしてください。
【2】「ショウガ葛湯」で胃の働きをリセット
冬の寒さによる胃腸の冷えが、胃の働きを悪くしていることがあります。実は低気温は、私たちの体に大きなストレスとなって襲いかかっているのです。その結果胃腸を24時間コントロールしている自律神経の活動が乱れてしまい、人によっては胃の消化機能がダウンして、胃のもたれや胃痛などが長期にわたっておきてしまうことも。こういう場合は昔から伝わる「ショウガ葛湯」が助けてくれますよ。材料の葛粉には体の血流や代謝を促進するイソフラボンやサポニンが含まれています。またショウガには体を温めるジンゲロンとショウガオールを含み、胃の働きを促進します。作り方は簡単です。鍋に水200tを入れて、大さじ1の葛粉を加えます。沸騰させたら黒砂糖大さじ1と、ショウガのしぼり汁小さじ1を入れてよく混ぜると、胃腸が喜ぶおいしい「ショウガ葛湯」の完成です。寒さから来る胃腸の働きが悪い時は、腹巻やタイツでおなかと下半身を温めるとともに、お風呂にじっくり入って、体の冷えをとることが重要です。
【3】胃もたれにはジャガイモのしぼり汁
昔から「胃もたれには生のジャガイモのしぼり汁がよい」とされてきました。これは昔の人が、ジャガイモが胃の粘膜に働いて、胃液の分泌を促す働きがあることを、体験的に知っていたからです。近代になってジャガイモのその働きのその立役者がわかりました。それはクロロゲン酸といわれるジャガイモの成分でした。胃もたれとは、胃の活動が弱まり、食べたものが胃の中でとどまってしまっている状態ですが、ジャガイモのクロロゲン酸には緩慢になった胃の働きを刺激して、動かす作用があるのです。ただしクロロゲン酸は熱に弱いため、生でとるのがベスト。そこでジャガイモをすりおろして、しぼり汁をのむわけですが、こうした医学的な知識がなくとも、昔の人は生活の中で体験して、それを知っていたのですね。
★注意
胃もたれなど、胃の働きが悪い時にはクロロゲン酸は効果的ですが、胃液を出す働きがあるため、胃酸で胃が痛いときは逆効果になります。胃痛、胃潰瘍時には用いないでください。
●ジャガイモのしぼり汁の作り方
1よく洗ったジャガイモの皮をむき、芽も丁寧に取り除きます。
2ジャガイモをすりおろして、二重にしたキッチンペーパー、またはガーゼの上にのせてしぼります。
3時間がたつとしぼり汁は黒く変色しますので、作った都度、使い切ってください。作り置きはできません。
4空腹時に小さじ2杯程度を飲みましょう。
●ジャガイモの代わりにコーヒー
低温でいれたコーヒーには、豊富なクロロゲン酸が含まれています。胃もたれのときには、ジャガイモのしぼり汁代わりに飲むと よいでしょう。
【4】カボチャの種
鉄分・亜鉛に関してはナッツの中でも最高水神の含有量のカボチャの種。オレイン酸やポリフェノールのリグナン類も含み、これらは動脈硬化や高血圧、頻尿の症状を軽減する期待が。また成分のペクチンは、胃の粘膜を保護して、消化を助ける働きもあります。スーパーなどで売っているカボチャの種をそのまま食べるか、天日で乾かしたカボチャの種を、油気がないフライパンでよく炒って食べましょう。これをドクダミやよもぎと一緒に煎じて飲む方法も。
【5】胃腸マッサージと塩湿布
・胃腸マッサージ
お風呂に入った時は、血行促進で体に元気を取り戻すだけではなく、胃腸もいっしょに健康にしましょう。入浴中、おへそを中心にして、「の」の字を書くように右回りに30回ほどさすっていきます。お湯の湯かげんでポカポカ温まった胃腸が、さらにマッサージで働きがよくなり、スッキリ。便秘解消のひと役にも。
・塩湿布
胃弱な方はお腹を温めるのを心がけましょう。腹巻や携帯カイロなど、身近なものを活用しましょう。また塩湿布もお奨めです。塩一袋分をフライパンで熱して、布袋に入れます。熱いのでタオルで巻いてください。仰向けに寝たら、布袋をお腹に当てます。1日15分から20分ほどお腹をこの焼き塩で湿布しましょう。塩は何度でも繰り返して使えます。
【6】夏の胃弱・胃もたれに玄米スープ
冷たい飲み物や食べ物、また低温のクーラーで体を冷やすと、胃まで冷え切ってしまいます。すると胃を司る自律神経のバランスが崩れることに。そうなると夏特有の消化不良や胃もたれ、胃の重苦しさに襲われてしまいます。玄米スープはこうした胃の悩みに古くから効くといわれてきた養生食です。豊富なビタミンやミネラル、食物繊維を含む玄米は、知られているように完全栄養食品です。この勢ぞろいした栄養が、冷たい食べ物飲み物で弱った胃を、じわっと立ち直らせてくれるのです。作り方は次の通り。玄米1合をボウルで洗って乾かしたあと、きつね色に色づくまで、三十分ほど炒り続けます。きつね色に色づいたら七合の水を加えましょう。沸騰させたら、とろ火に約一時間ほどかけ続けます。玄米が柔らかくなったら、こし網でこして皮をとりのぞきます(写真)。さあ玄米スープの出来上がりです。薄い塩味で味をつけましょう。玄米スープは作るのにちょっと時間がかかりますが、その分体がぐっと持ち直していく効果は折り紙付きです。猛暑時の食欲減退にもお奨めの一品です。